本当は、N君の話は避けたかったのです。



練習もしないで“イニシャルD”を真似て危ない目に会わないようにと思った、花屋のオヤジの失敗ドラテクなので避ける訳にはいかないですね。それは、私が名古屋に住み父親になり、B君の結婚式が明後日に迫った夕方でした。「N君が東名高速で事故に会い亡くなった」という知らせでした。翌日、色違いの2本のネクタイを持って東京へ。24歳、結婚4ヶ月、一人息子の彼は頭を包帯で巻かれ棺に入っていました。いつもニャッっと笑いながら私をおちょくっていた彼が静かに目をつぶっていました。私にも悲しい出来事でしたが、彼のお母さんが私と目が合った途端、泣き崩れたのを見たら。お母さんには二度と会ってはいけないと思ってしまいました。事故の原因は不明ですが、N君は仕事の為高速を走っていて、トラックとの間で何かトラブルがあったらしく、スピンしてガードロープに後ろから衝突し、後部のガラスを破り車外に放り出され頭を強打したとの事でした。事故の直後、仲間が通かかり見覚えのある白のRX−7を見つけ、他の仲間を呼び寄せ病院に急行したそうですが、既に手遅れだったそうです。

翌日はN君の告別式でしたが、無線の仲間は全員B君の結婚式に出席でした。和やかな雰囲気の中で無事終わりましたが、N君の席がポツンと空いていて、やっぱりあのニヤッとした笑顔が無い寂しさは隠しきれないものがありました。



亡くなったN君や家族の皆さんにとっては大変悲しい出来事なのは当然ですが、私達の心にも深い傷跡となって残り、懐かしいあの頃の話の最後には必ず沈黙が訪れます。
私が言っても説得力はありませんが、事故には気を付けてください。
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