悪魔のように速く、ドライバーを選ぶS30Z。主人公が悪魔のZのハンドルを切っても曲がらず。最初に事故を起こした時。私も、ハンドルを切ってもZが反応しないと感じた事を思い出しました。それは、S30を手放すと聞いた同学部のT君に「一度運転させて欲しい。」と頼まれ奥多摩に行った時の事です。小金井から運転を始めたT君は奥多摩湖の近くで「疲れたー!」と言って運転席を離れました。私は運転席に座りハンドルを見て驚きました。ウッドタイプのハンドルの表面が汗で白くなっていたのです。私は「何、緊張してんだよ!」と言って低速コーナーでリヤを流したり。泥でフロントが流れたのを、パワーでリヤを滑らうせて向きを変えたりと、余裕の運転をしていました。そして、峠の茶屋で昼食を食べ。下りに入り、一気に2速80km/hに達した時。ゆるい右カーブで少し右にハンドルを切った時。私は凍りつきました。曲がらな!とパニックしてしまい。急ブレーキで停車。車内にはタイヤの焦げた臭いが充満し、T君は「どうした!」と。私「ハンドルが切れなかった!」と言いながら。そうだホイルのオフセット量が変わって遊びが増えたんだと思い出しました。高速道路では、あまり気にならなかった遊びが。峠の下りというシビアな場所では、車が壊れたと思ったのです。この緩い右カーブは数ヶ月前ブレーキのパーコレーションを起こした場所で、停車して気が付いたのは、かなり勾配のきつい坂だったという事でした。

上の写真は、B君のチェリーFUに“あおられて”コーナーへの進入速度を見誤り、怖くてブレーキを踏んでいるところです。フェアレディZを購入して5ヶ月目ぐらい。ほとんど峠を走っていなかった為。FRの挙動に途惑っていました。場所は、上高地と高山の間あたりと思います。でも、2日後。高山から木曾福島に抜ける峠で。ムカつくスカイラインを追走。地元らしく結構速いのに。コーナーが近づくと追突しそうになるので。もしかすると、コーナーの手前で抜けるかもと。見通しの良い右コーナーで、スカイラインがエンジンブレーキをかけるタイミングで。対向車線へ。スカイラインがエンジンブレーキで減速している間、私はアクセルを踏んでいたので。驚くほどの速さで追い越し、フルブレーキで減速しアウトに膨らみ。一気に引き離しました。その後、この方法は、私の得意技?になりました。という事で。B君の春の旅Tのおかげで。ブレーキング勝負が出来るまでになったという。懐かしくあり、恥かしい写真なのです。とは言っても、まともにフルブレーキを踏めるようになったのは、更に5万kmほど走った頃でした。










悪魔のように速いZが闇の中に消えて行く。私も圧倒的なパワーの差に、そんな思いをした事がありました。狭い峠で厄介なのが、小さな車体にツインカムエンジンを搭載したトレノ・レビンでした。しかし、80km/h以上出せる直線があれば、ブレーキング勝負に持ち込みブッチ切る事ができました。スーパーカーと言われる車も。私が出会った人達は、200km/hをオーバーしている時間は1〜2分間と思われ。5〜10分間後には追い着いていたので、ブッチ切られたと感じた事は、ありませんでした。(常識的な人にしか会わなかったという事です。)そして、ニッサンシルビアにブッチ切られたのです。妻となる人を、家族に紹介する為に東北高速を福島に向かって160km/hで走っている時でした。(車内には音楽が流れ、雑談をしていました。)いつものように1・2・3・4・後方確認・1・2・3・4・後方確認を繰り返していると。日中なのにライトを点灯した車が見えたので、念の為、左車線に移動し減速すると。ルームミラーでシルビア。横を抜ける時に。紺色のジャンパーを着た3〜4人の男性と後部座席に大きな箱が見えました。1800ccで、そんなに乗ってブッチ切ろうなんて甘い!とばかりに。一気に車線変更し。アクセルを全開に。ところが失速・・・。エンジンは回っている。ギヤは抜けていない。クラッチも滑っていない。何が起きたのか判らずスピードメーターを見て驚きました。私の車に異常は無く190km/hを指していました。という事は、シルビアが速いんだと判り。前を見ると。シルビアは登り坂をものともせず加速し。視界から消えてしまいました。私は圧倒的なパワーの差に「速い!」と言って追いかけるのを諦めました。この時ほどパワーの差を感じた事は、ありませんでした。





フェアレディZ(GS30)で名古屋通いをしていた頃。そのうち運も尽きるだろう。社会的な責任もあるし。いい大人が暴走している姿は想像したくないと考え。全てを妻となる人に選んでもらい。最後に「フェアレディZなら、ステアリング機構はラック&ピニオンにして欲しい。」と。私が選んだのはステアリング機構だけというS130。





X1−9
湾岸ミッドナイトは、速さを手にする為の。さまざまな代償を描いた物語にも感じます。そのひとつが。走るのを諦め、妻との静かな生活を選んだのに。3年後、悪魔のZに魅せられ、妻子を捨てて。また、走りの世界に戻ってしまう。というものでした。そういえば私も、結婚して3年目。やり残した事を思い出したのです。それはフェアレディZ(S130)を購入する際。妻に出会っていなければ手にしていたと思う。ロータスヨーロッパTC・SPかフィアットX1-9(エックスワン・ナイン)という小型ミッドシップカーに乗る事でした。娘が2歳の今なら購入できると考え。妻と娘を連れて自動車屋さんへ。(ロータスヨーロッパは新車が無いのでフィアットの代理店へ。)妻「ゆきちゃんの乗る所無いねー。」と。そう言われれば。一人で乗っていても、つまらないなと思い断念。
そして、2週間位経った頃。妻に「そんなに欲しいなら買えば。」と。どうも毎晩カタログを見て、ため息をついていたらしいのです。数日後。購入を決意して自動車屋さんへ行き、車を見て驚きました。なんと50万円値上がりしていたのです。理由は、またインジェクションでした。とりあえずショールームから引っ張り出し名古屋市内へ。フェアレディZがファミリーカーに感じるほどのコーナーリング性能に感動したものの。最初に見た時から100万円の値上がり。たった1500ccの排気量では、上り坂や高速道路では勝負にならない。そして、ステアリングを握って気が付いたのは。妻子がいては、この車の性能を引き出せないという事で。私は、気持ちよく走る夢を諦めたのです。



フィアット X1−9


2年後



半額で4人も乗れる、シティ カブリオレになりました。

つづく